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Break Card E.G.O. 3F/3C アスリート/ワーカー/サイボーグ 5/4/4 バインド2/インターセプト/戦闘機人 ≪あなた≫は、このカードをファストカードのタイミングであなたのテリトリーのキャラクターにセット宣言可能。 このカードがセットされたターンの終了時まで、次に≪このキャラクター以外のあなたの支配キャラクター≫が捨て札される場合、そのキャラクターを場に残す。 No.EX0396/EX0496 Rarity R/SP Illustrator 緋賀ゆかり Expansion エキストラエクスパンション 魔法戦記リリカルなのはForce カード考察
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Break Card E.G.O. 3F/3C クリーチャー/ミスティック/ワーカー 5/5/4 イニシアチブ このキャラクターがバトルによるダメージを与えた際、バトル相手が捨て札されていない場合、≪このキャラクターのバトル相手全て≫にXダメージを与える。Xはこのキャラクターの攻撃力の数値と、このキャラクターの持つイニシアチブの数の合計に等しい。 1:≪このキャラクター≫のアタック宣言を取り消す。 No.EX0384/EX0494 Rarity R/SP Illustrator 緋賀ゆかり Expansion エキストラエクスパンション 魔法戦記リリカルなのはForce カード考察
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Break Card 極星帝国 4F/3C ウォリアー/スキャナー 5/5/4 バインド2/フッケバイン このカードがセットされた場合、≪あなたのデッキ≫から“ディバイダー944”のネームを持つパーマネントカード1枚を、コストを支払ってこのキャラクターにセット可能。 ≪このキャラクター≫は精神ダメージを受けない。 このキャラクターにパーマネントカードがセットされている場合、≪このキャラクター≫の攻撃力に+4する。 No.EX0418 Rarity R Illustrator 緋賀ゆかり Expansion エキストラエクスパンション 魔法戦記リリカルなのはForce カード考察
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三提督 混乱の続いた管理局黎明期。その時期に幾多の平和貢献を行った勇士達。 現在は実質の現場を退き、相談役的な立場で管理局を見守っている。 オートバイ 自動車と同様、水と触媒を燃料とした内燃機関を利用した二輪車。 飛行移動の一般乗用機の自粛が行われている主要世界において、市街地の移動手段の他、趣味性の高い乗り物としても愛用されている。 一般販売車輌には転倒防止のための非常用オートジャイロやタイヤ空転の制御機能、 衝突時のフィールド発生等の機能搭載が義務づけられているが、それでも身体が露出する乗り物であるため、 安全措置としてヘルメットやプロテクターの装備が推奨される。 リインフォースII 彼女の実態は人格型ユニゾンデバイス。適合する術者と「融合」し、その行動を補助・強化する性質を持つ、 命と心を持つデバイス「融合騎」である。「祝福の風・リインフォース」の名は、かつてはやてと共に過ごし、 ある悲しい運命の元その生涯を閉じた、同名の融合騎より贈られ、受け継いだもの。 会うことの叶わなかった「初代」に対しては尊敬を。自身が受け継いだその名には誇りを持って、二代目祝福の風は空をゆく。 ヴォルテール アルザスの土地に単体生息する稀少古代種の竜で、「真竜」と呼ばれるクラスの巨大個体。 彼ら稀少古代種は総じて長命で、広大な土地に単体~ごく少数で生息。 現在の人間の魔法・科学を含む理解力では計りきれない能力や行動様式を持つ者も存在する。 近隣の原住民からは信仰の対象となることも多く、ヴォルテールもまた、アルザスにおいては「大地の守護者」として畏敬されている。 ギンガ・ナカジマ スバルの実姉にしてシューティングアーツの師。魔導師ランクは陸戦Aを保有。 陸戦フォワードではなく「捜査官」であるため、バリアジャケットは陸士共用型ではなく、独自のものを身に纏う。 生来の左利きであるため、リボルバーナックルは左手に装備している。 人造魔導師 人間に対して、主に外科的な処置・調整によって、強力な魔力や魔法行使能力を持たせる技術。 魔法文化が全盛となって以来、幾度も試みられた研究で、 最終的には生命操作技術によって適合性の高い「素体」を作成するスタイルにまで到達したが、 倫理的な問題などから次第に禁忌とされ、成功率の低さも相まって、現在は「過去の技術」となりつつある研究。 幻惑 人間の視界と魔力機器による探査を騙す、高度な幻惑技術。実体の伴わない幻影も、用法によっては時に実体よりも脅威と成りうる。 オーバルプロテクション 完全球形で発生させるバリア系防御。 全方位からの攻撃を防ぐが、攻撃への即時移行を行えないため、仲間を保護する時・状況確認・防御専念などの際に使用する。 リミッター ニア~オーバーSランク魔導師の最大魔力発揮は、時に大きな危険を孕む。 直接的な戦闘行動そのものや周囲への影響は勿論、魔法の暴発・誤射といったトラブルも存在する。 それらを防ぐため、通常、一部隊に1~2名しか存在しないそれら強力な魔導師を、周囲の部隊員が徹底的にフォローを行い、 部隊の上司がその行動の責任を負うことになる。複数のニア~オーバーSが同一部隊において同時に行動できないようにする保有制限は、 強力な魔導師が集中しすぎることを避ける他、「強力な魔導師の独走や暴走・間違いを防ぐ」という安全装置としての機能も存在する。 照準支援 視界の届かないような超長距離攻撃を行う場合、「照準」そのものに高度な技術や魔法が必要となる。 そのため、HQ(指令部)や照準サポートの専門家からの「照準支援」を受けて放つのが一般的な「超長距離型」のスタイルとなる。 はやては通常、リインフォースIIとのユニゾンによって正確かつ高度な照準支援を得るが、 ロングアーチからも同様の支援を受けることができる。 フレースヴェルグ 超長距離砲撃魔法。遠距離広域型であるはやての真骨頂とも言える魔法で、同時に複数地点への発射が可能な、着弾炸裂魔法。 その効果範囲の広さと高い威力はもはや「殲滅兵器」の域にあり、八神はやての保有魔法の中でも、ほぼ最大に近い効果範囲を持つ。 古代ベルカ式魔法だが、発射基体となる前面の魔法陣がミッド式になっている。これはロングアーチからの支援をより正確に受けるため、 「発射」のプロセスの一部をはやてが改良していることがその理由。ミッド・ベルカ両式の魔法を扱う「魔導騎士」ならではの運用といえる。 トライシールド 近代ベルカ式の防御魔法。ミッド式における「ラウンドシールド」古代ベルカ式における「パンツァーシルト」に相当する、 魔法陣を使用したシールド系防御、対象の攻撃を弾いて反らす効果を持つ。 フロントアタッカーがツートップで存在するチームの場合、両者が攻防の分担を的確に行うことで突破力は飛躍的に向上する。 ディバインバスター(ゼロレンジ) スバルの砲撃魔法。発生させたスフィアごと対象の装甲を打ち抜き、内部で炸裂させている。 通常時は、両手で練り上げた魔力を左手で保持、右手で加速をつけて撃ち出すというプロセスを取るバスターだが、 スフィアの保持を対象に撃ちこむ右拳のみで行い、離れた位置まで伸ばさずにその場で炸裂させることで、 威力を落とさず(むしろ向上させ)発射までの速度を短縮している。「最大威力は落とさずに、動作はより小さく、少なく、速く」。 なのはに教わった基礎と基本を忠実に実践した、ディバインバスターの進化形の一種である。 環境迷彩 厳密には魔法ではなく、ガリュー生来の生体機能。 魔力を使用し、周囲から自身の姿を隠すフィールドを生成し、闇に同化する。 明るい日中ではフィールドそのものを目視しやすいため効果が薄いが、暗所においては有効性が高い。 衝撃弾 同じく、ガリューの生体機能。体内の魔力を弾丸状に生成して発射する。 攻撃力は一般的な魔導師の魔力弾と比較してもさほど高くないが、音と衝撃の効果が強く、 主に対象の感覚を数瞬の間混乱させ、その隙を突くために使用する。 衝撃波 正式の術式を踏む魔法ではなく、自身の魔力を衝撃に変換して放つだけの「魔力運用」による攻撃。 膨大な魔力を持つ者が使用すれば、そのごく単純な「攻撃ですらない攻撃」は強大な攻撃力を生む。 プロテクション なのは直伝の防御魔法。回避運動を基本とするフルバックながら、リソースが軽く高速発動が可能な「ディフェンサー」ではなく、 魔力消費が大きいが強固なプロテクションを選択しているのは、将来的には広域や遠隔展開を行い、 仲間全員を守れるようになっていって欲しいという発展性を考慮してのなのはの選択。 訓練の結果、回避型の後衛としては意外なほどの強固な防御力を、瞬時に展開することが可能なのだが…。 オプティックハイド 付与した対象の姿を隠す幻術魔法。スバルが呼びかけることでルーテシアの注意を引きつけ、 その隙に背後からティアナが接近し、確保している。 アイコンタクト一つで行える、対象確保のための2人の基礎コンビネーションであり、ティアナの幻術はこういった局面でも有用性が高い。 スターレンゲホイル 古代ベルカ式魔法。轟音と閃光によって、対象の感覚を一時的に奪う効果を持つ。 発生させた閃光弾を投擲・発射することで、自身から離れた位置で炸裂させることができる。 ヴァリアブルバレット 防御を突き抜けて対象に直接打撃を与える射撃魔法。 対AMF戦での有用性が目立つが、通常の魔力防御に対しての効果も高い。 ブレネン・クリューガー 古代ベルカ式。自身の周囲に発生させた火炎を撃ち出す魔法。 弾体の核として個体化させた燃焼性の液体を発生させ、そこに着火、射出している。 着弾時に高温で燃え上がる効果を持つが、術者の意志で瞬時に消火させることも可能。 ナックルバンカー リボルバーナックルで魔力を高め、拳の前面に硬質のフィールドを生成、そのフィールドごと衝撃を撃ち込む打撃魔法。 対象の近接攻撃にカウンターとして使用することで、刃物などの鋭い武装でも受け止め、 同時に対象の武器や攻撃使用部位にダメージを与える効果がある。 凍てつく足枷(フリーレン・フェッセルン) 古代ベルカ式。周辺の水分を瞬時に凍結させることで対象を捕獲する。 凍結させるための水分が多い場所での有用性は高く、水溜りのあるような場所での発動速度は極めて早く、発動後の強度も高くなる。 ギガントハンマー グラーフアイゼンのフォルムIII・ギガントフォルムによる打撃。 重量を活かした打撃にバリア・シールド破壊の効果を持たせただけのごく単純な攻撃だが、単純故にその威力は高い。 ウイングロード 螺旋形状や階段形状での展開によって、陸戦魔導師たちの「縦方向」への行動範囲を大きく広げることが可能。 補助的な役割でも有用性の高さを見せている。 封印処理 安定・あるいは停止状態にあるロストロギアや魔力装置、デバイスの類は「封印」によって機能を完全に停止させることができる。 補助系魔法の持ち主が担当することが多く、フォワードメンバーではキャロがもっとも高速かつ確実に行える。 地雷王 ルーテシアの召喚虫。無人世界の山岳地帯に生息する巨大虫。生体電流によって放電し、魔力を使用して地震を起こし、 局地的な地震を発生させる生体能力を持つ。なお、「地雷王」はルーテシアの命名。 送還 負傷した召喚獣は戦闘から外し、本来の居住地や安全な場所に送還することで、ダメージの拡大を防ぐ。 貴重な召喚獣を不要に傷つけないため、召喚士にとっては召喚と同様に重要な配慮。 アルケミックチェーン 召喚した鎖による対象の捕獲。訓練によって、発動速度の高速化と長射程化が成されている。 トーデス・ドルヒ 魔力付与を行ったダガーを召喚・射出する。簡易誘導性能と、着弾爆裂の効果を持つ。 ソニックムーブ エリオの高速機動。今回は一瞬で対象に接近する目的で使用。 地面でのバウンドを不規則反射にすることにより、捕捉・攻撃を受けづらい機動としている。 フリジットダガー リインフォースIIのオリジナル魔法。 初代リインフォース及びはやてが使用する「ブラッディダガー」に凍結効果を付与している。 対象の周囲に発生させることで、対象の動作を迅速に停止させることが主な目的。 リングバインド ミッド式の基礎的なバインド魔法。対象を魔力リングで縛り、動作を停止させる。 拘束具 管理局員が使用する、物理拘束具。対象の動作と魔力発動を阻害し、行動を封じる。 運搬時は薄いボックス型にまとまっており、使用時には金具とベルトに展開させる。 IS ヘヴィバレル NO.X・ディエチのインヒューレントスキル(先天固有技能)。 固有武装・イノーメスカノンにエネルギーを送り込んで砲撃弾を生成、それを撃ち出す技能。 エネルギー弾の性質はディエチの意志で決定する。 IS ディープダイバー NO.VI・セインのインヒューレントスキル(先天固有技能)。無機物に潜行し、自在に通り抜けることができる。 無機物内部を泳ぐように移動することで、地下や建造物の内部も自由に移動できる。 潜入・隠密行動に適した技能で、自身が接触している対象も、自身と同様に無機物潜行の効果を与えることができる。 (サイズ制限あり、最大で人間2~3人程度) なお対象がバリアやフィールドを展開している際には潜行効果を付与できない。 エクシードモード 高町なのはと愛機レイジングハート、限定解除時のフルドライブモード。 クイックな高速機動や省魔力の概念を切り捨てたバリアジャケットは絶対的な強度を誇り、 旧エクセリオンモードにさらなる改良を加えたデバイス構成は、強力な射撃と大威力砲撃に徹底特化している。 不落の固定砲台にして、不屈の単体遊撃戦力。汎用性を無視し、短所を長所で帳消しにする。 10年前から変わらない高町なのはの空戦魔導師としての資質を最大限に活かすために組み上げられたモード。 プラズマバレット フェイトの誘導射撃魔法。 直射魔法プラズマランサーよりも威力や速度で劣るが、簡易な誘導性能によって対象を取り囲むように着弾させることが可能。 着弾時に放電しながら炸裂するため、効果範囲が広くなる点もメリットとなる。 IS シルバーカーテン NO.IV・クアットロのインヒューレントスキル(先天固有技能)。幻影を操り、対象の知覚を騙すことを旨とした技能で、 攻撃・防御の能力をほとんど持たないクアットロは、この能力を駆使して「戦わずして勝つ」ことを基礎戦術とする。 ある意味では前線戦闘に向かないその技能や性質を、クアットロはむしろ楽しんでいる傾向があるのだが…。 デアボリック・エミッション 八神はやてが初代リインフォースから受け継いだ、広域殲滅魔法。スフィアを中心に、広範囲に非物理破壊性の魔力攻撃を充満させる。 本来は自身を中心に発動させる魔法だが、はやての資質「遠隔発生」によって遠距離での発生を可能としている。 トライデントスマッシャー フェイトの直線砲撃魔法。中心の砲線の他に2本伸びる砲線が着弾点で結合することによって反応、電撃を伴う大威力を発生させる。 エクセリオンバスター なのはの砲撃魔法。長射程狙撃型のディバインバスターに対して、中距離射程で大威力を叩きつけるスタイルの砲撃。 エクシードモードに搭載される大径カートリッジにより、カートリッジ消費数は1発のみでも発射可能。 IS ライドインパルス NO.III・トーレのインヒューレントスキル(先天固有技能)。飛行を含む高速機動能力で、その最大速度は人間の視認速度を凌駕する。 フェイク・シルエット ティアナの幻術魔法。封印したレリックに付与して、その姿を変化させていた。激しい動作や衝撃を受けないかぎり、 人間サイズで十分程度、小物ならば数時間~丸一日程度はそのまま偽装を維持することが可能。 レリックコア レリック本体の事を、ナンバーズやルーテシアはそう呼称する。その意味や、「11番」を探すルーテシアの真の目的は、いまだ不明。
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貴船に降り立った昌浩たちを、無数の妖怪が取り囲んだ。猿に鳥に牛にヤギ、種類も様々な妖怪たちが大地に、木の上にひしめいている。 「大歓迎だな」 「やはりここで間違いない」 もっくんが紅蓮へと変化しながら言った。 ここは本宮のやや開けた場所だ。しかし、木々が多いので、迂闊に炎を使えない。雨が降らず乾燥しているので、下手をすると貴船が全焼してしまう。 「窮奇の姿はないな」 人間の姿に変化したザフィーラが周囲を見渡して言った。 「ならば、おびき出すまで」 シグナムがレヴァンティンを構える。 「臨める兵(つわもの)闘う者、皆陣列(やぶ)れて前に在り!」 昌浩の指先から魔力で出来た白銀の刃が放たれる。 それを合図に、運命をかけた一戦が始まった。 以前と同じ草原に出たクロノたちを、再び十二神将が出迎えた。 青龍、白虎、太陰、玄武、六合の五人だ。 「今日も引くつもりはないようだな」 青龍が険呑に言った。 「無論だ」 「剛砕破(ごうさいは)!」 青龍の手から本気の一撃が放たれる。光弾が地面に当たり、激しく土砂を巻き上げる。 クロノが思わず目を覆うと、砂のカーテンを突き破って太陰が現れる。 「またお前か!」 「またって何よ!」 クロノと太陰が空中で激しい接戦を繰り広げる。 「……」 「……」 ユーノは玄武と対峙していた。なのはの援護に行きたいのだが、目の前の敵を無視もできない。 とにかく足止めしようと、ユーノがバインドの魔法を放つ。 「波流壁!」 同時に玄武が水の結界を作り出す。ユーノのバインドが玄武を拘束し、玄武の結界がユーノの動きを封じる。 「しまった!」 ユーノは転移を試みるが、結界はそれすらも阻む。一方の玄武は涼しい顔で拘束されている。 お互いに完全に手詰まりだった。 その横では、アルフと六合が肉弾戦を演じている。 そして、 「はあああああああ!!」 「どおりゃああああ!!」 青龍と白虎が気合の声と共に、攻撃を繰り出す。 「もういやー! なんでこの人たち、こんなに怒ってるのー!?」 なのはとフェイトは男二人から必死に逃げていた。前回にも増して迫力が増している。 青龍たちが、なのはたちを執拗に狙うのは、放たれる魔力から、二人が最強の敵だと察したからだ。 飛べない青龍では、逃げられると追いきれない。それで白虎と連携することにした。白虎が空から、青龍が地上から攻める。 幼い外見に惑わされない。真っ先に全力で潰す。青龍たちはそう決めていた。 その様子を、晴明は部屋でシャマルと共に眺めていた。 「だんだん可哀想になってきたのう」 晴明としては足止めさえしてくれればいいのだが、血の気の多い青龍は完全に本気だ。 半泣きで逃げ回る女の子二人に、晴明は同情を禁じ得ない。 「晴明さんは、どうしてここまで私たちに協力してくれるんですか?」 シャマルが疑問をぶつける。窮奇退治は利害の一致としても、時空監理局の追手まで防いでくれるのはやり過ぎだと思う。 「お主たちが悪い人間には見えぬからよ」 晴明は人を食った笑みを浮かべる。 「それだけですか?」 晴明はそっと溜息をついた。今は十二神将のほとんどが出払っている。本音で語っても問題あるまい。 「わしの後継者は昌浩と決めておる。十二神将もいずれあやつが受け継ぐだろう。しかし、十二神将のほとんどが昌浩の力を疑っている。中には絶対に認めないと息巻いている者もいるほどじゃ」 「それで窮奇退治ですか?」 「そうじゃ。わしの助けなしで、窮奇を倒せば、昌浩の実力を認めざるを得まい。その後、気に入られるかどうかは、昌浩次第じゃ」 晴明が窮奇退治に本腰を入れていないのは明らかだったが、そんな理由とは思わなかった。 振り返ってみれば、十二神将が全員一緒のところを見たことがない。まさかそこまで仲が悪いとは。 (私たちは仲良しでよかった) たった四人しかいないヴォルケンリッターの仲が悪かったら、目も当てられない。 「でも、私たちの手助けはいいんですか?」 「どこの馬の骨ともしれない連中と協力し目的を遂げる。それはそれで度量の広さの証明になる」 「馬の骨は酷いですよ」 「やや、これは失敬」 二人して朗らかに笑う。 利用できるものはすべて利用し、いくつもの目的を同時に遂げる。まさに老獪。それでいて根底にあるのは、悪意ではなく孫に対する深い愛情だ。 (家族っていいな) これまでは漠然と家族というものを考えてきた。しかし、昌浩の家庭を見て、家族を本当に理解できた気がする。 帰ったらきっと、はやてともっといい関係が築けるだろう。シャマルは心からそう思った。 貴船の戦いは苦戦が続いていた。 延焼の危険があるので、広範囲攻撃ができないのだ。これだけ激しく攻められては、昌浩も大技を使う余裕がない。 一匹ずつ倒すしかないので、数に劣る昌浩たちは不利だった。 「くそ、この前にみたいに結界に引きずり込んでくれれば」 「泣き言を言うな。目の前の敵に集中しろ」 苛立つヴィータをシグナムがたしなめる。 「でも、このままじゃ防ぎ切れねぇよ!」 「危ない、ヴィータ!」 昌浩がヴィータを抱えて地面を転がる。鋭い爪が昌浩の肩を軽く掠める。 ヴィータはすぐさま体勢を立て直し、アイゼンで猿の妖怪を叩きつぶす。 しかし、その一瞬の攻防で、昌浩たちは紅蓮たちから引き離されていた。 紅蓮たちと昌浩たちの間に、妖怪の群れが殺到する。完全に分断された。 「やべぇ! 逃げるぞ!」 合流は無理と判断したヴィータと昌浩は、敵の包囲網の一角を破り山林の中へと入って行く。 「裂破!」 「くらえー!」 山道を駆け降りながら、昌浩の放つ術が、ヴィータの鉄球が、追いすがる妖怪を吹き飛ばす。 ヴィータ一人なら飛べばいいのだが、昌浩を置いてはいけないし、昌浩を背負って飛べば前回の二の舞だ。 脳裏に、刃に貫かれた昌浩の姿が蘇る。あんな思いは二度とごめんだ。 「ヴィータ!」 昌浩の声に、ヴィータは我に返る。 二人は川べりまで追いつめられていた。 「飛び越えるぞ!」 ヴィータが昌浩の首根っこをつかむ。 ヴィータと昌浩の体が宙に浮き、川を飛び越えようとした瞬間、川から伸びた触手が二人の足をつかんだ。 「しまった!」 振りほどく暇もなく、触手は二人を川の中へと引きずりこんだ。 「昌浩、とっとと起きろ!」 背中に衝撃が走り、昌浩は痛みで覚醒する。 うつ伏せに倒れた昌浩の背中を、ヴィータが踏みつけている。どうやら蹴り起こされたらしい。 「ヴィータ……」 「文句は後だ。見ろ」 川の中に引きずり込まれたはずなのに、そこは巨大な宮殿の中だった。 太い柱がいくつも立ち並び、本来なら玉座か祭壇があるべき場所には、巨大な翼を生やした虎が座っていた。 「窮奇!」 「我が城にようこそ。気に入ってもらえたかな」 窮奇が喉の奥で笑う。ここは窮奇が作り出した異界の中だった。 「一人で来るとはいい度胸じゃねえか! ぶっ潰してやる!」 ヴィータがアイゼンを振りかぶる。 「ふっ」 窮奇の魔力が大地を割る。そこから生じた不可視の壁がヴィータと昌浩を隔てる。 「ヴィータ!」 昌浩が壁を叩く。壁の向こうではヴィータがアイゼンを振りまわしているが、壁はびくともしない。音も完全に遮断している。 「貴様、我の配下にならぬか?」 「お前は彰子を殺そうとしている。そんな奴の仲間になんて、なるものか!」 「それは誤解だ。我はこの傷を癒すため、力ある者を欲している。だが、少しばかり血を貰うだけで、命まで奪うつもりはない」 窮奇が前足で地面を叩くと、彰子の姿が空中に浮かびあがる。 自室らしい場所で、彰子は熱に浮かされていた。その手には傷があった。 「彰子!」 「あれは我が配下がつけた刻印。決して癒えぬ傷、消えぬ傷」 傷からわき出す瘴気が、彰子の体をむしばんでいた。 「この苦しみから解放してやれるのは、我だけだ。それに貴様、この娘が欲しいのではないか?」 「!」 「我なら、その願いを叶えられる。この娘をさらい、この異界で幸せに暮らすといい。誰にも邪魔されぬ」 苦しむ彰子の姿が消え、代わりに幸せそうに笑う昌浩と彰子の姿が映し出される。 昌浩は凍りついた眼差しでそれを眺める。 窮奇がゆっくりと前に進み出る。昌浩の肩の傷から出た血が、手に伝い落ちている。窮奇は長い舌でそれを舐めとった。 窮奇の首の傷がみるみる塞がっていく。 昌浩が落ちるのは時間の問題だ。窮奇は自らの勝利を確信した。 「昌浩、昌浩!」 ヴィータが全力で壁を叩く。こちらの声は届かないが、向こう側の声はすべてこちらに届いていた。 「シャマル、転送を! シャマル!?」 シャマルとの通信が途絶している。ヴィータは完全に孤立していた。 窮奇が勝ち誇ったように目を細める。ヴィータの眼前で、昌浩が闇に落ちる姿を見せつけようとしている。 「駄目だ、昌浩!」 ヴィータが叫ぶが、昌浩は茫然と立ったままだ。 諦めかけた好きな人を手に入れられるのだ。抗えるわけがない。 窮奇の傷が癒え、魔力がますます強くなる。 (もう駄目なのか?) ヴィータが膝を屈しかけた時、昌浩が口を開いた。 「さあ、返答やいかに?」 「……断る」 静かに、だが、はっきりと昌浩は言った。 「何故だ!?」 窮奇が狼狽する。 「ここには蛍がいない! だから、駄目なんだ!」 今にも泣き出しそうな顔で昌浩が叫ぶ。 一緒に蛍を見に行くと約束した。その約束も果たせずに、自分の思いだけを押し付けることはできない。 (そっか。お前はそういう奴だったよな) 自分の身を顧みず、他人の幸福を願える存在。ただそれだけの為に全力を尽くす少年。そんな少年だからこそ、ヴィータは惹かれたのだ。 窮奇の動揺が結界にも伝わったのか、表面がかすかに揺らめく。 「アイゼン!」 ヴィータ渾身の一撃が、結界を粉砕する。 「ヴィータ!」 「その化け物をとっとと倒すぞ!」 「おのれ! 小癪なガキどもが!」 「ガキだけじゃないぞ」 天井に裂け目が走り、シグナム、ザフィーラ、紅蓮が姿を現す。 「貴様の配下はすべて倒した。後はお前だけだ」 紅蓮が全身に炎をまといながら言った。 よほど激しい戦いをくぐりぬけたのか、全員傷だらけだ。だが、その体からは活力がみなぎっている。 「ならば、貴様ら全員喰らってやるわ!」 窮奇の全身から紅い稲妻が放射される。 ザフィーラの展開したバリアがそれを防ぐ。 「鋼の軛!」 ザフィーラの咆哮と共に、地面から無数の鋭い棘が生え、窮奇の体をズタズタに切り裂く。 「はあああああああ!」 紅蓮の体から炎の蛇が放たれる。蛇は龍へと姿を転じ、白銀に輝き、窮奇を炎に包む。 「シュツルムファルケン!」 レヴァンティンが弓へと形を変える。放たれた矢が、窮奇の眉間を正確に射抜く。 「ギガントシュラーク!」 巨大化したグラーフアイゼンが窮奇の角を叩き折る。 「舐めるな! この程度で我が倒せるものか!」 満身創痍になりながらも、窮奇の魔力は衰えない。大地が裂け、瘴気が噴き出す。 「化け物め」 あの化け物を倒すには、もっと力がいる。 『昌浩君。これを使って!』 空間に出来た裂け目のおかげで、シャマルとの交信が回復する。昌浩の足元に緑の魔法陣が広がり、中から一振りの剣が浮かび上がる。 『晴明さんが鍛えた降魔の剣よ』 昌浩は剣を手に取る。強い力を感じる。 (駄目だ。これでもまだ足りない) 昌浩はこれまで培った知識を総動員する。 自分だけの力で足りなければ、どうすればいいか。 神の力を借りればいい。ここは龍神の住まう貴船。そして、神の力を借りる最もいい方法。 それは、 「この国の言葉でお願いする、だ!」 昌浩が走る。早口で呪文を唱えながら。 窮奇の振り上げた前足をザフィーラが両腕で受け止める。 「行け!」 瘴気を避け、ヴィータが無数の鉄球を打ち出す。 「邪魔はさせねぇ!」 窮奇が怯み、翼を開く。飛んで逃げようとしているのだ。 「させん!」 シグナムが右の羽根を切りつけ、紅蓮の炎が左の羽根を焼く。 窮奇がでたらめに魔力の刃を放つ。それらが昌浩の足を、肩を掠め、血を流させるが、昌浩は止まらない。 駆け抜けた昌浩が剣を突き出す。肉を貫く手ごたえ。呪文はすでに完成している。 「雷電神勅、急々如律令!」 龍神が封印から解き放たれ、純白の雷を窮奇に落とす。 「ぐぬあああああああああああ!」 窮奇が断末魔の悲鳴を上げる。雷によってその身を焼かれ、体内で炸裂した魔力が体を砕く。大妖怪、窮奇の最後だった。 「終わった」 昌浩がその場にへたり込む。魔力はもう空っぽだ。立ち上がる気力もない。 窮奇が死んだことで、世界が音を立ててゆっくりと崩れていく。 「昌浩」 ヴィータが心配そうに声をかける。 様子を察したシグナム、ザフィーラ、紅蓮が一足先に元の空間に戻る。 滅びゆく世界には、二人しかいない。 「……俺さぁ、窮奇の誘いに乗りかけたんだ」 「…………」 「もし彰子と一緒に暮らせるなら、それも悪くないって」 昌浩の声はかすれていた。何かを堪えるように上を向いている。 「ヴィータたちとも約束したのに、窮奇を倒すって、なのに……」 昌浩が静かに嗚咽を漏らす。 ヴィータはこういう時、慰める言葉を持たない。だから、こう言った。 「私は何も聞いてない。だから、好きにしろ」 ヴィータが昌浩と背中合わせで座る。 「ごめん。それから、ありがとう。ヴィータ」 昌浩は静かに泣いた。世界が消えるぎりぎりまで、ヴィータは一緒にいてくれた。 言葉はなくとも、ただ背中から伝わる温もりが、昌浩は嬉しかった。 しとしとと雨が降る。 蘇った龍神が盛大に雨を降らせていた。 封印を解いてくれたお礼に、龍神は昌浩たちの傷を治してくれた。 一晩経って、昌浩たちは再び晴明の部屋に集められた。 「皆、本当にご苦労だった。特にシグナム殿、ヴィータ殿、シャマル殿、ザフィーラ殿には、この晴明、どれだけ感謝しても足りません」 「いえ、我々も目的を達成できました」 窮奇の魔力を回収しても、闇の書は完成しなかった。しかし、そのページの大半は埋まっていた。これならば、主はやても目を覚ますだろう。 「さて、彰子様についてなのだが」 昌浩の表情が暗くなる。結婚の日取りが決まったのだろうか。 「うちで預かることになった」 「はあ!? どういうことですか、じい様」 「彰子様にかけられたのは、決して解けぬ呪い。このまま天皇の元に嫁げば、天皇にも呪いの穢れが及んでしまう。そんなことできるわけなかろう」 「じゃあ、結婚は?」 「彰子様の異母妹で、そっくりな方がいる。その方を彰子様として嫁がせるそうじゃ」 「そうですか」 昌浩は気が抜けたように座り込む。 昌浩の一念が、決まったはずの運命を変えたのだ。しかし、当の昌浩にその実感はない。 「彰子さまの呪いは、常に陰陽師が側にいて清め続けるしかない。そこでうちで預かることになったのじゃ。それにしても昌浩や」 晴明は扇で顔を覆って、泣き真似をする。 「じい様は情けないぞ。窮奇を倒すのに夢中で、彰子様にかけられた呪いを綺麗さっぱり忘れるとは。何たる未熟。これは一から修行のやり直しじゃのう」 昌浩は喉まで出かかった怒声を飲み込む。腹は立つが、今回ばかりはさすがに言い返せない。 「よ、よかったじゃないか、昌浩」 ヴィータがばしばしと背中を叩いた。わざとらしいほどに明るい笑顔だ。 「ありがとう。でも痛いよ、ヴィータ」 「さて、目的も果たしたし、帰るぞ、みんな」 ヴィータが静かに立ち上がる。 「えっ? もう少しゆっくりして行っても」 「すまないな、昌浩殿。我らも主の容体が心配なのだ」 シグナムも立ち上がって言った。 「早くアイスやケーキを食いたいぜ」 「ガスコンロが懐かしいわ」 シャマルが肩を回しながら言った。家事は嫌いではないのだが、現代文明に慣れた身に火打ち石から火を起こすのは重労働だった。他にも洗濯や裁縫、家事だけで一日がかりだ。 「そっか。もうお別れなんだ」 「なんて顔してんだよ、昌浩。私たちと別れるのが、そんなに寂しいのか?」 「べ、別に寂しくなんか……」 「へっ。お前がどうしてもって言うなら、会いに来てやってもいいぜ?」 「素直じゃ……痛!」 からかおうとしたシャマルの足をヴィータが踏みつける。 「本当? 絶対また会おうね。約束だよ」 「しょうがねぇな」 腕組みしながら、ヴィータが言った。 庭に出た四人は時空転移を開始する。 「あ、そうだ」 思い出したように昌浩が言った。 「この前の占い、ようやくわかったよ。これからヴィータたちにはとてつもない困難が立ちはだかる。でも、大丈夫。信じて頑張っていれば、きっと君たちを助けてくれる人が現れる。道は開ける、だって」 「なんだよ、それ」 ヴィータは苦笑する。漠然としていて、まったく参考にならない。 「でも、まあ、覚えておいてやるよ」 「みんな、本当にありがとう!」 ヴィータたちの姿が空の彼方に消える。 昌浩はいつまでも手を振っていた。 「ヴォルケンリッターたちが移動を開始しました」 アースラでも、その動きは感知していた。 「数は?」 「四です」 「つまり、ここには闇の書の主はいなかったということでしょうか?」 「そうね。こちらが追っているのを知りながら、主の元を離れるとは考えにくい。ここには魔力の収集に来たと見るべきかもね」 クロノの疑問にリンディが答える。二度目の戦いでも、クロノたちは撤退せざるを得なかった。 クロノたちが戦った相手は闇の書がらみではないようだ。彼らは一度としてベルカ式の魔術を使わなかった。現地の協力者なのだろう。 できれば、もう少し調査をしたいのが本音だが、学校があるなのはたちの手前、あまり長く滞在できない。 なのはたちにとっても、早くこの時空を離れた方が精神衛生上いいだろう。あれ以来、なのはとフェイトは毎晩、青龍と白虎に追いかけられる悪夢を見ているらしい。 アースラはヴォルケンリッターを追って、元の時空へと進路を取った。 エピローグ それからしばらくして、闇の書事件は解決した。 闇の書は元の夜天の書へと戻り、はやての足も治った。 その過程で、はやては悲しい別れを経験したが、今はなのはとフェイトという新たな友を得て、幸せに暮らしている。 昌浩の占いに出ていた助けてくれる人たちとは、なのはたちのことだったのだ。まさか時空監理局と和解する日が来るとは予想もしていなかった。 (お前の言う通りになったな、昌浩) ヴィータは子犬の姿になったザフィーラと歩きながら、あの少年のことを思い出す。 事件が解決した後、あの世界での出来事を話したら、はやてが行きたいと言い出した。 何故か、なのはとフェイトは全力で断ったので、はやてと守護騎士だけであの世界に向かった。だが、大規模な次元震でも起きたのか、道は閉ざされ行くことはできなくなっていた。 でも、これでよかったのかもしれない。昌浩と彰子が仲良くしている姿を見ずに済んだのだから。昌浩の幸せを願っていても、これだけはどうしようもない。 一つだけ心残りなのは、また会おうという約束を果たせなかったことだ。 あの律儀な少年のことだから、きっといつまでもヴィータたちが現れるのを待っているだろう。 「ヴィータ」 ザフィーラが声を出す。 道の向こうから、一人の少年が走ってくる。その顔は昌浩に瓜二つだった。 「ま、」 思わず声をかけようとするが、少年はヴィータの横を走り抜けて行ってしまう。 (当り前か) あの少年がここにいるわけがない。きっと他人の空似だろう。名前だって違うに決まっている。 「おーい、昌浩」 懐かしい声が、聞き慣れた名前を呼ぶ。 驚いて振り返ると、背の高い青年が少年を出迎えていた。 Tシャツにジーパンというラフな服装をしているのが、その顔は間違いなく紅蓮のものだった。 青年がこちらに気がつく。 「あ……」 青年は人差し指を口に当てると、そっと片目を閉じた。 ヴィータは、あの世界に着いたばかりの頃、交わした会話を思い出す。 あの世界はもしかしたら古い日本で、タイムスリップしたのかもれしれないと。その予想は正しかったのだ。 あの少年は昌浩の子孫なのだ。そして、十二神将は人ではない。紅蓮は千年の時を超えて生き続けているのだ。 紅蓮が後ろ手に手を振りながら去っていく。それを昌浩に似た少年が不思議そうに眺めている。 (いや、違う) あれはきっと昌浩の生まれ変わりだ。たとえ前世の記憶はなくとも、また会おうという約束を果たしに来てくれたのだ。 瞳が涙に滲む。 「本当……律儀な奴だよ、お前は」 去りゆく二人の姿を、ヴィータはいつまでも見送っていた。 エピローグ2 ヴィータが帰ってその話をした翌日、シグナムは朝早く家を出た。 半日を費やして町を駆けまわり、ついに一軒の大きな屋敷を見つけた。その家の前にたたずむ夜色の外套をまとった男を。 シグナムは力強く呟いた。 「楽園よ。私は帰ってきた!」 終 目次へ
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リリカルガウザー 一話「闇の騎士、魔法の国へ」パートA 「大丈夫ですか!?立てますか!?」 ローブを着た短髪の女性は黒岩の濡れた体に触れながら大声でそう聞いてきた。 黒岩としてもここが何処かも分からず、痛みで立つこともできない状態なので、彼女の助けを借りる事にした。 エリ以外の人間に頼るのはあまり気が乗らないが、この際意地を張っても仕方が無い。 「痛みで上半身も起こせない…手を貸してくれれば助かる。」 「分かりました!少し荒っぽいかもしれませんけど、ちょっとの間ですから我慢してくださいね!」 女性はローブの裾をまくり、黒岩をひょいと抱き抱える。 「細身の割には力がある女だ」と黒岩は思った。 女性はそのまま出入り口の方まで黒岩を抱えながら歩いた。 : 女性は建物の中に入ると、古風な作りをした回廊を歩いた。 そして英語で「Medical room」というプレートが付けられた扉の前まで来ると、その部屋に入り、備え付けられていたベッドに黒岩を寝かせた。 そして医療用のツールを用意し、黒岩の上半身の服を脱がせるとツールを使用して黒岩の体から何発もの銃弾を抜き、いくつもの傷口を消毒して止血し、ガーゼを貼り付けた。 「これでよし…」 手当てを終えた女性は額の汗を拭い、傍に置いてあった椅子に腰掛けた。 「かなり多くの傷を負っていました。応急手当てだけじゃ心配ですので、今から救急車を呼びます。」 「いや…これでもういい。」 黒岩はゆっくりと上半身を起こした。 いくら死にかけていたとはいえ、闇生物の体は人間以上の自然治癒力を持っているため、適切な手当てさえしてもらえればある程度は動けるようになる。 あと数日もすれば体全体が万全の状態に戻るだろう。 「え!?さっきは上半身を起こすのも痛いって…」 女性は黒岩がいきなり上半身を起こしたことに驚き、目を丸くした。 「生憎、結構タフな体なんでな。銃の弾さえ抜いてもらえれば、後はもう大丈夫なんだよ。」 「はぁ…それは凄い…」 「所で、アンタは一体誰だ?ここは何処だ?」 「ああ、そうでした。私はシャッハ・ヌエラ。この協会の修道女です。そしてここは、聖王教会の本部です。」 「聖王教会?」 黒岩は聞きなれない単語に目を細める。 図書館で世界中の知識や建物、文化を調べ、数多くの教会の名前も知っているが、そんな名前の教会は聞いたことが無い。 黒岩は詳細な情報と、知らない教会についての知識を得るため、シャッハと言う女性にもう少し詳しい話を聞いてみようと思った。 「なんだその教会は?俺は地球上のありとあらゆる知識を頭に入れているが、そんな名前の教会は聞いたことが無いぞ。」 「地球の…あらゆる知識?何でも知ってるんですか?」 「ああ、例を見せてやる…」 黒岩は言葉を一端切り、一息吸うと、目つきを変えてシャッハを右手の人差し指で指した。 「知っているか!?世界で初めてキリスト教が国教として認められた国は、301年のアルメニアだ!その時の教会の建築は、シリアの影響を色濃く受けたものであったと言う!」 「そうなんだ…」 シャッハは腕組みをしながら感心して言った。 シャッハも地球についての知識はある程度持っているが、ここまで詳細な話しは知らなかった。 シャッハは黒岩がどの程度教会や宗教についての知識を知っているのか聞いてみたくなり、他の話題を聞いてみることに決めた。 「じゃあ、世界で最も古いステンドグラスについても知っていますか?」 「勿論だ。世界最古のステンドグラスは、ドイツのロルシェ修道院で、破片の形で見つかった!その修道院は七世紀に作られたが、ステンドグラスが作られたのは九世紀代と推定されているという!」 「そうなんですか…いろいろあるんですね…」 シャッハはこの話を聞いてさらに知らない知識への興味を持った。 彼女にとって聖王教会の修道女兼騎士として強さも大事であるが、博識であることもそれと同様に大事だ。 いや、むしろ修道女と言う戦いとは普通関わらない立場から考えれば、博識であることの方が大事かもしれない。 シャッハは自分を磨くために新たな知識の獲得を考え、黒岩の話を本格的に聞くことに決めた。 「じゃあ、色々な宗教についての知識を教えてください!まだまだ修行中の身である私にとって、貴方の話はとてもためになりそうです!」 もちろん、一度には覚えきれないため、宗教についての知識だけではあるが。 「ほう…俺の話が聞きたいか…よかろう、知っているか!?」 黒岩は自分の薀蓄を聞いてくれる人間がいたことを喜び、有頂天になって薀蓄を語り始めた。 黒岩の薀蓄は、好敵手だった暁には適当に流され、愛していたエリにさえも「あんたの薀蓄はもうウンザリ」とまで言われていたほど煩がられていた。 だが、今は自分の薀蓄を興味を持った目で聞かせて欲しいと言ってくれる人間が目の前にいる。 黒岩は煩がられたうっぷんを晴らすかのように、情報を得ることも忘れ、薀蓄を語り続けた。 : 2時間後、黒岩の薀蓄がようやく終わりを告げた。 シャッハは2時間休み無しで語り続けた黒岩への感謝と健闘を称える拍手をし、黒岩の額には熱弁した証である汗が光っていた。 「はぁ…はぁ…どうだ?」 「素晴らしいです!まさか宗教だけでもこんなに細かな知識があったなんて驚きました!修道女として、一歩高みに歩み出せた気がします!」 「そうか…それは良かった…ん?」 黒岩はようやく思い出した。 自分はこの聖王教会についての情報を問おうとしていたのに、いつの間にか自分の薀蓄教室になってしまっている。 久々に自分の薀蓄を嬉々として聞いてくれる人間がいたので、調子に乗ってらしくもなく熱くなりすぎてしまい、本題を聞くことをすっかり忘れていたことに黒岩はやっと気付いたのだ。 黒岩は恥ずかしさを感じ、それをごまかす為に「ゴホン」と一回咳払いをすると気を取り直し、先ほどの質問をシャッハにもう一度した。 「ところで、聖王教会とはなんなんだ?」 「あ!そうでした!」 シャッハも他人の質問を忘れていたことに恥ずかしさを感じたのか、一瞬だけ頬を赤く染めて慌てると、姿勢を直した。 「そういえば、貴方の名前を聞いていませんでしたね。」 「俺は黒岩、黒岩省吾だ。」 「そうですか…黒岩さん、貴方はミッドチルダや時空管理局について知っていますか?」 「ミッドチルダ?それに時空管理局だと?」 黒岩はさらに頭を悩ませた。 ミッドチルダに時空管理局、どちらにも聞き覚えは全く無い。 管理局というからには何かを管理するのだということは何とか分かるが、ミッドチルダと言う単語についてはさっぱりだ。 「どちらも知らん。」 「分かりました。それともう一つ、貴方は地球出身で、地球人なんですよね?」 「は?」 さらに訳が分からなくなった。 いくら正体が闇生物とはいえ、自分は人間の姿をしているのだから地球人なのは当然だろう。 シャッハの話の内容が理解できなかったが、一応問いに答えることにした。 「当たり前だろう。俺は地球人だ。まるでここが地球ではない別の星で、あんたは地球の人間じゃないようないいぐさだな。」 「その通りです。」 「は?」 「この世界はミッドチルダ。貴方が居た地球とは、別の次元世界です。つまり私は、ミッドチルダのミッド人という訳です。」 「な、何だと!?」 黒岩は思わず声を張り上げた。 流石の彼も、冗談で言ったはずの台詞に冗談のような回答が帰ってくるとは思っていなかった。 だがよく考えてみると、そんなに驚くほどのことでもなかった。 自分達ダークザイドも、闇次元界という地球とは異なる世界から、滅びた闇次元界の変わりに地球に移住するという目的のために地球にやってきた。 自分達が住んでいた世界のことを考えれば、地球でも闇次元界でもない世界が存在してもなんら不思議ではない。 「…そうか…異世界なのか…」 「?、案外簡単に納得されるんですね。もっと混乱したり、「嘘をつくな」と笑い飛ばされると思っていました。」 「確かに驚いたが、その…俺はそういう異世界についての知識も多少持ち合わせているんでな、派手には驚かん。」 「異世界についての知識ですか…それより単刀直入に聞きます、地球に帰りたいですか?帰すだけなら、簡単に出来るのですが…」 「…いや、帰るつもりは無い。」 黒岩は今更地球に帰る気は無かった。 悪の脆さを知り、皇帝になって世界を統べること以上に大きなモノを握った彼にとって、もう地球を支配する気もシャンゼリオンと決着を付ける気も無かった。 愛するエリにさえ、彼女の今後のことを考えると会わない方が良いと思えた。 「黒岩さんは、故郷に帰りたくないんですか?いろんな次元漂流者を見たことがありますけど、帰れる故郷に戻りたくないなんていった人間は黒岩さんが初めてです。」 「そうか…頼みがある。仕事を探したいんだが、何処かに職業安定所はないか?」 黒岩は人間への支配欲もシャンゼリオンへの闘争心も湧き上がってこない今、どうせ異世界に来たならこの世界で生き、この世界で働き、この世界で死んで行こうと思った。 この世界にはシャンゼリオンもザンダー達幹部も居ない為、シャンゼリオンに今まで受けた仕打ちの仕返しとして決着を挑まれる事も、ザンダー達と関わり、戦いを強要されることも無いため、ひっそりと生きるには丁度良い場所だと思えたからだ。 自分を待ち続けているだろうユリカにも、謝るために会うつもりは無かった。 彼女は黒岩の強さに惚れ込んだ女性だ。 黒岩が皇帝として君臨することを望む彼女にとって、皇帝であることを辞めた自分の姿を見せて幻滅させる気にはなれなかったからだ。 それにもし謝りに行ったとしても、自分が愛していた黒岩のイメージを粉々に砕かれ、狂乱するのは目に見えている。 だから彼女のためにも、このままそっとしておこうと黒岩は思った。 「仕事?この世界で働きたいんですか?」 「地球には少し嫌な思い出があってな。戻りたくないんだ。」 「そうですか…なら一つ聞きますけど、カウンセリングの仕事の経験はありますか?」 「え?あ、ああ。経験どころか、俺はそれが本業だった。」 黒岩は地球では東京都知事に就任する前は「黒岩相談所」というダークザイドのための相談所を開いていた。 ダークザイドの目的は、人間社会に紛れ、「人知れず密かに」を掟とし、人間の生体エネルギー・ラームを吸い取って種族の保存のために生きていくことであった。 だが、人間社会に密かに隠れながら行動しなくてはいけないダークザイドたちの中には、人間社会の厳しさに苛まれ、仕事に嫌気がさしてアルコール中毒になった者、人間関係の悪さから胃に穴が開いた者、ノイローゼとなり自殺した者などが少なからずおり、不満を溜めて掟を破り、大掛かりに人間を襲おうとしている闇生物達が大勢居た。 黒岩の仕事は、それらの悩める闇生物達の相談に乗り、アドバイスをしてやることだった。(後の世界征服計画のため、東京都知事当選の票稼ぎに彼らを利用するという裏の目的があったが。) このアドバイスで助けられたダークザイドの数は多く、黒岩も自分のカウンセラーとしての能力には自信を持っていた。 なのでカウンセリングと言う仕事は黒岩にとって得意中の得意だ。 そして黒岩の「本業だ」という言葉を聞いたシャッハは、目を輝かせて右手でガッツポーズを作った。 「なら!ちゃんとした仕事があります!悩める人々を助ける、崇高な仕事です!」 「何?…」 「どういうことだ?」と黒岩が台詞を続けようとしたときだった。 「ちょっとシスターシャッハ!探したよ~!二時間も何処にいたの!?」 シャッハと同じローブを身につけ、水色の髪をした少女が医務室の中に入ってきた。 彼女は怒った表情をしながら、シャッハに近づいてくる。 「あ、セイン!」 「騎士カリムが呼んで…あれ?」 シャッハの隣まで歩いた所で、セインと呼ばれた水色の髪の少女は、上半身に沢山のガーゼを貼り付けている黒岩に気付いた。 「うわ!凄い怪我…てか、アンタ誰!?」 「紹介します。黒岩省吾さんです。怪我をして庭園に倒れていたところを、私が助けたんですよ。」 シャッハは見慣れない男性の痛々しい姿に驚いているセインに、黒岩のことを紹介した。 黒岩はいくら命の恩人とはいえ、知り合ったばかりの女性に自分のことを他人に紹介されるのは何か可笑しな感じがしたが、特に口に出すことはしなかった。 「そうなんだ…う~ん…」 セインはくりくりとした丸い目で黒岩の顔を覗き込む。 そしてしばらくしてから顔を離すと、腕を組んだ。 「中々良い男ジャン。もしかして、シャッハの彼氏か何か~?」 「な!?」 セインは目を細め、すこしやらしげな声を出してシャッハをからかい、シャッハはそんな彼女のからかいに見事引っかかって頬を染めた。 「セイン!何言ってるんですか!?」 「ははは!ごめんごめん!でも、そんなにムキになって否定するって事は…」 「セイン~!!」 シャッハは腕をまくり、椅子から立ち上がる。 厄介事に発展すると察した黒岩は、話がこじれる前に仕事の内容を聞くことにした。 「おい、話の続きをしろ。」 「ああ!?そうでした!すみません…こんなからかいに反応するなんて、まだまだ未熟でした…」 シャッハは慌てて黒岩の方を向いて頭を下げた。 彼女のこの愚直なまでの丁寧な態度に、黒岩はシャンゼリオン・涼村暁の相棒である速水克彦、またの名をザ・ブレイダーの姿を重ねた。 楽観的な暁と真面目な速水は絵に描いたような凸凹コンビで、いつも性格の違いから衝突が絶えなかった。 だが衝突が多かったからこそ、二人の結束の力は強く、その力に敵う闇生物は存在しなかったのだと今の黒岩には分かっていた。 「仕事の内容ですが、黒岩さんにはカウンセラーとして、このミッドチルダの首都・クラナガンに相談所を設け、悩める人々を救って欲しいんです。」 「何だと…?」 ∴ それから二週間ほどが過ぎた。 「最近、妻や子供の私への対応が冷たいんですよ…私が帰ってきても挨拶はそっけないし、夕食も温めなおそうとはしない… それどころか!妻は私と口を聞こうともしてくれないんです!それに、四歳になる私の子供ですら、「パパ大嫌い」と言って、私に近づいてすらくれないんですよ! 私が何悪いことをしたって言うんですか!休暇も惜しんで、貧しい家庭のためにと汗水垂らして働いているのに!なんであんなにそっけない対応をされるのか…」 ソファーに座った中年の無精ひげを生やした男性は、目尻に涙を光らせながら嘆いた。 そんな男性の向かい側のソファーに座った黒いスーツとネクタイを身につけた男・黒岩省吾は、吸っていたタバコを灰皿にこすり付けて火を消し、吸殻をそのまま灰皿の中に捨ててソファーから立ち上がった。 「おそらく、貴方のご家族が貴方に冷たいのは、貴方がそうやって仕事に熱中しすぎるのが原因だ。」 「な…なんですって!?」 男性は涙を拭い、黒岩の目を見た。 「おそらく、貴方が家庭が貧しいからという理由で休暇を取らず、働いてばかりで家族の相手をしないので、貴方のご家族は貴方に失望し、貴方に冷たくなったのだと、私は思いますよ。」 「そういえば…今年はまだ何処にも家族で出かけてないし、子供への誕生日プレゼントも渡してない…」 「貴方は少し仕事を休み、ご自分のご家族に家族サービスをしたほうがいい。そうやって家族と触れ合えば、荒んだ家庭環境も修復できるはずだ。」 「は…はい!でも…私にはお金が…」 「別に旅行に行ったり、高い玩具を子供に買ってあげるのだけが家族サービスではありません。 どこかの大きな公園や山へのピクニックでも、プレゼントは安いお菓子の詰め合わせでもいいんです。 貴方が心を込め、自分に出来る精一杯の家族サービスをすれば、貴方のご家族だって貴方を見直し、今の冷たい関係を暖かい関係に修復できるはずです。 もちろん、貴方の心からの笑顔も忘れずにね。」 「ありがとうございます黒岩さん!では…さようなら!」 男性はさっきまでの沈んだ表情とは一転した笑顔で黒岩に頭を下げ、室内のドアに向かい、もう一度黒岩のほうを向くと一礼するとドアを開けて出て行った。 「ふう…今日はこれで五件目か。」 黒岩は溜息をつくと、所長用のデスクの椅子に腰掛けて新しいタバコを取り出し、咥えて火を点け、吸い始めた。 二週間前、黒岩は聖王教会のカリム・グラシアの手引きでビルの一室を借り、新たな「黒岩相談所」を開き、カウンセラーとして働いていた。 今ミッドチルダには、仕事の厳しさから過労死する者、家庭環境の崩壊から殺人事件に発展したり、家庭内暴力を振るう者、不景気で仕事をリストラされた者の増加に悩まされていた。 本来それらの人々を助けるための政策を行うはずの時空管理局は、海と陸の両部隊の管轄問題など、武力についての問題について協議を続けるのに精一杯で、そう言った人々への救済が追いついていない。 せめて人々の悩みを聞き、アドバイスを与えるカウンセラーが必要であったが、そのカウンセラーの数も全く足りていなかった。 なので黒岩のように、異世界とは言えそれを本業として活動していた人間の力は、喉から手が出るほど欲しかったのだ。 黒岩も慣れた仕事が出来るならこれは好都合と思い、シャッハの紹介した仕事で働くことを決めたのだった。 「まだ昼過ぎか…まだまだ相談者は来そうだな。」 黒岩は吸ったタバコの煙を吐いて呟きながら、デスクの傍に設置した小型液晶テレビのスイッチを入れた。 丁度ニュース番組が放送していて、それに目を通す。 内容はニュース速報、現在の株価など、地球となんら変わりない平凡なニュースだ。 黒岩はシャッハに、このミッドチルダについて、そして時空管理局についての事を相談所を始める前に聞いていた。 ミッドチルダは魔法文化が発達した国で、時空管理局に所属する武装局員達はその魔法を武器として駆使し、ミッドチルダを守る地上部隊と次元世界を守る次元航行部隊(この世界では「海」と呼ぶらしい)に分かれ、無限に存在する世界を守るために時空犯罪者を取り締まったり、ロストロギアと呼ばれる古代の危険な遺産を回収したりしているらしい。 聖王教会とは、ミッドの大きな宗教団体のようなもので、管理局を全面的にサポートしているようだ。 だが、黒岩は管理局を良く思っては居なかった。 評論番組などで評論家や管理局の将官達が「地上部隊は行動が遅い。これでは事件や災害で助かる命も助けられない。」「海の連中は優秀な人間ばかりを引き抜いてばかり。だから地上の守りはおろそかだ」という論議を繰り広げるたびに「馬鹿馬鹿しい」と感じた。 どんなお題目を並べても結局彼らが行っていることは責任の擦り付け合い、手柄の取り合いだ。 自分達が優位に立つことばかり考え、一番に考えるべきはずの庶民のことなど二の次にしか考えていない。 ダークザイドの騎士であった昔の自分なら地球と同じように、今にでもこの世界を征服し、ダークザイドの支配する世界へと作り変えようとしていただろう。 だが、そんな意欲も今はわいてこない。 黒岩にとって今大事なのは、全てを忘れ、ミッドチルダ人黒岩省吾として第二の人生をスタートすることだった。 「今の俺には何も関係ない。余計なことは考えず、ひっそりと生きていこう。」 黒岩は自分に言い聞かせると、ニュースを見続けた。 そしてニュース番組が終わり、朝の連続ドラマの再放送が始まったと同時にインターホンが鳴り響いた。 午前中から働きづめだった黒岩はできるなら一人でドラマを見て居たい気分だったが、もし仕事の依頼なら断れないため、客を入れることにした。 「どうぞ。」 「は~い♪」 「お邪魔します。」 相談所のドアが開くと、セインとシャッハが入室してきた。 客だと思っていた黒岩は少し落胆した。 これが客ならテレビ画面の前に座れず、客への対応を考えながらでも落ち着いてドラマの内容を聴けるが、やかましいやり取りの多いセインとシャッハの場合、テレビ画面の前に座れたとしても落ち着いてドラマが聴けないからだ。 彼女達はたびたび黒岩の様子を伺いに来る。 黒岩は「途中で仕事を投げ出すことはないからいちいち来なくてもいい」とは言っていたが、シャッハ曰く、「助けた人の働きぶりをよく見なければ折角助けた私も満足しない」らしいので、彼女はセインを連れてよくここを訪れていた。 煩い女だとは思ったが、命を助けられたと言う立場上、突っ返すことはしなかった。 「シャッハ…それにセイン…またあんたらか…」 「またとは何よ~!折角来たんだから、コーヒーくらい出しなさいよ~!」 「セイン!」 シャッハはセインの我侭な一言に腹を立て、彼女の頭部に空手チョップを見舞った。 「痛った…何すんのよシスターシャッハ!」 「マナーが悪いです!いくら私達がお客とはいえ、聖王教会の修道女がコーヒーをねだるなんていうはしたない真似がどうして出来るんですか!」 「冗談だって!ったくクソ真面目なんだから…」 セインはシャッハから顔を背けて口を尖らせた。 セインとは医務室で会ってはいたが、詳しく彼女と話し合ったのは相談所がまだ出来る前、聖王教会本部に数日間身を寄せていたときだった。 彼女は明るく楽観的な性格で、シャッハと違い、自分の薀蓄を聞くのは苦手なタイプだった。 黒岩はシャッハが女版速水克彦なら、セインは涼村暁の女版だと思っていた。 もちろん、彼女は暁と違って金遣いは荒くなく、人を傷つけるような発言はしなかったが。 「だいたい貴方はいつも…」 「ああもう!うっさいから説教は止めてよ!」 「う…うっさい!?セイン!口の聞き方に…」 「おい、静かにしろ。今やっと時間が空いたんで、ドラマを楽しんでいるところだ。」 そう言っても数分後にはまた二人の言い争いが始まるのだが、例えその場しのぎでも静かにしてもらいたかった。 この二週間、まともな休憩時間が合ったことは少ない。 管理局も軍備の話ばかりではなく、失業者や悩みを持つ者達のために、自分のようなカウンセラーの増加や景気の安定を考えろとなんども心で文句を言ったことがある。 なのでどれだけ無駄なのかは分かっていても、休まる時間がある時くらいは静かにして欲しかった。 「ドラマって、そんなの夕方にも再放送やってるじゃない。そんなのにかまけて、大切なお客様にコーヒーの一杯も出さないなんて…」 「セ~イ~ン~!」 「だって黒岩さん、命の恩人に向かって何の感謝も示してないんだもん。」 「貴方は何もしてないじゃないですか!それに、命を助けたからって生意気な口を聞くというのは修道女として…」 黒岩は溜息をつき、ドラマを見ながらまたその場しのぎの注意を行おうとしたときだった。 「ん?」 テレビ画面の上端に、「ホテル・アグスタでの従業員、利用客行方不明、三十人を突破」というテロップが表示された。 「おい、シャッハ!」 「あ…は、はい!」 「これは何だ?」 黒岩はテレビ画面をシャッハのほうに向けて回し、表示されたテロップを指差した。 忙しいとはいえニュースは見ていたが、こんな事件は聞いたことが無い。 「ああ…それですか…遂に隠せなくなったんですね…」 「どういうことだ?」 「はい、実は…」 シャッハはこの事件についての説明を始めた。 この事件が起きたのは二週間前、ちょうど黒岩が相談所を開いた頃だ。 ミッドチルダでも高級ホテルの一つであるホテルアグスタで、二人の男性利用客が姿を消した。 すぐに捜査班が編成され、ホテル周辺をくまなく探したが、失踪した二人は遺体も見つからなかった。 管理局と協力関係にある聖王教会側は反対したが、管理局地上部隊は徹底的な捜査を行って遺体も見つけられなかった事への責任追及と糾弾を逃れるため、この不思議な事件を内密に捜査をしようとしたために公のニュースにはならなかった。 だが、それ以降も犠牲者が増えすぎたため、事件を隠し通せなくなったのだという。 ちなみに犠牲者の共通点として、消えた人間は皆ミッドでも有数の大富豪だということが上げられている。 「…これが事件の全容です。」 「…そうか。」 黒岩は顎に手を当て、親指で数回なぞると、テレビのスイッチを消した。 「あれ?見ないの?」 セインが顔を覗いてきたが、黒岩の意識はその不思議な事件にあった。 遺体が全く見つからない大富豪と言う共通点がある犠牲者たち… 黒岩は「遺体が見つからない」「被害者には共通点がある」という二点の事件の特徴に焦点を絞り、事件の真相について考えてみた。 この二点の特長は、自分がよく知っている者達が行う行為と似通っていたからだ。 そして、その答えはすぐに導き出された。というより、事件の特徴から導き出される答えは黒岩の中では一つだけしかなかった。 「まさか…!」 黒岩は驚きの色を顔に表し、椅子から勢いをつけて立ち上がった。 この事件の真相は高い確率でダークザイドの仕業だ。 なぜこの世界にまでダークザイドが居るのかも、考えてみれば不思議ではなかった。 自分達ダークザイドは全てが地球に移住してきたわけではない。 地球への移動中に次元の狭間に飲み込まれ、姿を消した闇生物達も数多く存在する。 もしそれらの闇生物たちがこの世界に逃れてきているのなら、或いは… 「…今日はこれで仕舞いだ。」 黒岩はドアの方に向かい、隣にかけてあった本日休業のプレートを手に取った。 「黒岩さん?」 「どうしたのよ?」 「そのアグスタというホテルへ…案内しろ。」 黒岩はシャッハとセインの二人に事件の場所であるアグスタへの案内を頼んだ。 本当はこのまま傍観することも出来た。だが出来なかった。 もしこれが本当にダークザイドの仕業なら、自分にも無関係ではないと思えたからだ。 そして自分はこの世界でカウンセラーとして生涯生きていくのか、もしくはこの世界に迷い込み、隠れて生きていかなくてはいけないダークザイド達のために再び皇帝として立たなければならないのか、どちらを選ばなければならないかがこの事件の向こうにある気がしたからだった。 プロローグヘ 目次へ 一話Bへ
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真相に近づいていく事件 親子と姉妹とひと時の平和と 集長の一言 スバルたちが、なのはたちと 朝練をしている頃 なのはとフェイトの子 ヴィヴィオも成長していった 分かって行くヴィヴィオのこと 楽しみな回です 映像は、こちら(消失の場合は、連絡の事 魔法少女リリカルなのはStrikerS ep 15 part 1 魔法少女リリカルなのはStrikerSサブタイトルへ戻る
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グループ模擬戦の日にこてんぱんにされた ティアナ・スバル。 だが、 それは、彼女のため だが、そのことを伝えるのは難しくて 集長の一言 ティアナの無茶な十種連に過去を見のだろうか? そして、緊急出動。 なのは達隊長陣は、フォアード陣を本部に残し 事態に当たる そして、フォアード陣は、なのはの A’sとStrikerSの間の過去が、今、語られる 映像は、こちら(消失の場合は、連絡の事 魔法少女リリカルなのはStrikerS ep 9 part 1 魔法少女リリカルなのはStrikerSサブタイトルへ戻る
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ネタバレ名簿 死亡状況の詳細は死亡者リストでどうぞ ●のついたキャラクターの名前をクリックするとそのキャラクターが退場してしまった話にジャンプします 【魔法少女リリカルなのはStrikerS】1/10 ●高町なのは(StS)/●シャマル/●ザフィーラ/●スバル・ナカジマ/●キャロ・ル・ルシエ/●ルーテシア・アルピーノ/○ヴィヴィオ/●クアットロ/●チンク/●ディエチ 【魔法少女リリカルなのはA s】0/4 ●高町なのは(A s)/●フェイト・T・ハラオウン(A s)/●シグナム/●ヴィータ 【リリカル遊戯王GX】0/5 ●ティアナ・ランスター/●遊城十代/●早乙女レイ/●万丈目準/●天上院明日香 【NANOSING】0/4 ●アーカード/●アレクサンド・アンデルセン/●インテグラル・ファルブルケ・ウィンゲーツ・ヘルシング/●シェルビー・M・ペンウッド 【コードギアス 反目のスバル】0/4 ●ルルーシュ・ランペルージ/●C.C./●カレン・シュタットフェルト/●シャーリー・フェネット 【魔法少女リリカルなのは マスカレード】0/4 ●天道総司/●相川始/●キング/●金居 【仮面ライダーリリカル龍騎】0/3 ●八神はやて(A s)/●浅倉威/●神崎優衣 【デジモン・ザ・リリカルS&F】0/3 ●エリオ・モンディアル/●アグモン/●ギルモン 【リリカルTRIGUNA s】0/3 ●クロノ・ハラオウン/●ヴァッシュ・ザ・スタンピード/●ミリオンズ・ナイブズ 【なの☆すた nanoha☆stars】0/3 ●泉こなた/●柊かがみ/●柊つかさ 【なのは×終わクロ】0/2 ●新庄・運切/●ブレンヒルト・シルト 【リリカルなのはStrikerS 片翼の天使】0/2 ●セフィロス/●アンジール・ヒューレー 【魔法妖怪リリカル殺生丸】0/2 ●ギンガ・ナカジマ/●殺生丸 【L change the world after story】0/2 ●ユーノ・スクライア/●L 【ARMSクロス『シルバー』】0/2 ●アレックス/●キース・レッド 【仮面ライダーカブト】0/2 ●フェイト・T・ハラオウン(StS)/●矢車想 【ゲッターロボ昴】0/1 ●武蔵坊弁慶 【魔法少女リリカルなのは 闇の王女】0/1 ●ゼスト・グランガイツ 【小話メドレー】0/1 ●エネル 【ウルトラマンメビウス×魔法少女リリカルなのは】0/1 ●ヒビノ・ミライ 【魔法少女リリカルなのはFINAL WARS】0/1 ●八神はやて(StS) 1/60
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タカヤはどこかベッドの上で目を覚ました。 見慣れない場所。だが恐らくどこかの病院だろう。 まさかまだこれほどの設備が揃った病院があったとは、タカヤにとっても軽い驚きだった。 ん?ちょっと待てよ……「これほどの設備が揃った」? どういうことだ?いや、それよりも…… 「ここは?……俺は……誰だ……?」 タカヤは起き上がり、一人呟く。確か……自分は…… 過去の記憶を少しずつ思い出していく。 木星へと旅だったアルゴス号の中、ラダムのテックシステムに自分の家族達が取り込まれる。 父は最後の力を振り絞り、自分を助け、そして自分は『テッカマンブレード』となり地球に降り立った。 そして取り込まれた家族や友人達はラダムの『テッカマン』として肉体を改造され…… 「……ラダムッ!」 思い出せば思い出す程憎悪が込み上げてきた。タカヤは憎き敵の名を呟き、拳をにぎりしめる。 そうしていると、この病室のドアが開き、二人の子供が入って来た。一人は金髪で髪をツインテールにした少女。 もう一人は黒髪で、少女よりも少し大人びた雰囲気の少年だ。 「あ……もう、大丈夫?。」と、金髪の少女が話し掛けてくる。 「……お前らは?」 「それはこっちの台詞だ。キミこそ何者なんだ?」 タカヤは二人に質問するが、逆に少年に聞き返されてしまう。 「……わからない……。」 「何?」 「何も思い出せない。俺が誰なのか……」 タカヤは少年に記憶喪失だと偽る。いや、本当は覚えているが、言いたくないのだ…… 「え……つまり、記憶喪失って事?」 「……そうみたいだな。」 少年は「はぁ」とため息をつきながら言った。 第1話「天駆ける超人」 アースラ、艦長室。 「私が艦長のリンディ・ハラオウンです。あなたは……記憶喪失なんですって?」 「……ああ。」 「そう……。ではあなたが何故ここにいるのか、その経緯もわからないかしら?」 「気付いたらここにいた。」 「……そう。」 リンディは何を聞いても「わからない」の一点張りのタカヤにため息をつく。 「じゃあ……これに見覚えはあるかしら?」 「これは……」 そう言いリンディが差し出したのは、緑のクリスタルのようなもの。 これはテッカマンに変身するために必要なシステムボックス。タカヤはそれを受け取り、眺める。 「悪いけど、このクリスタル、私達で調べさせてもらったわ。」 「何?」 「これはデバイスに近いみたいだけど、どうにも構造がわからない謎の物質みたいなの。これもわからないかしら?」 「……。」 タカヤはデバイスという単語が気になったが、余計な事は言わない方がいいと判断した。 「……まぁ、一応あなたのモノっぽいからあなたが持ってるといいわ」 リンディはクリスタルを見ながらそう言う。……まぁ、もし返してくれなければ奪うつもりだったが…… 「で、あなたの体についても色々と気になる点があるの。」 「…………。」 「……って言っても、記憶が無いあなたに言ってもわからないわよね……。」 そう言いこれ以上の言及を諦めるリンディ。タカヤはテッカマンだ。普通の人間と違っていてもそれほど驚くことはないだろう。 「……俺は……何故ここにいる?それにお前らは何者だ?」と、今度はタカヤが質問する。 「私達は時空管理局という組織の者です。あなたがここにいる理由ですが……」 その後タカヤは長々と訳のわからない話を聞かされた。どうやらどこかの次元世界で、次元振とやらが発生し、そこでタカヤは倒れていたらしい。 そしてタカヤの周囲にはその世界のモンスターの死体が転がっていたという。 それから一番信じがたいのが、魔法やデバイス、魔導師といったファンタジー系の話だ。 とりあえず、記憶が戻るまではこの時空管理局がタカヤの面倒を見てくれるらしい。 数分後、アースラ食堂。 ようやくリンディから開放されたタカヤは食堂に向かった。 そこには、さっきの子供二人と、大人っぽい女性が二人いる。 「私はフェイト・テスタロッサっていいます。」 「あたしはアルフ。フェイトの使い魔だよ。」 「僕は執務官のクロノ・ハラオウンだ。」 「で、私がオペレーターのエイミィ!よろしくね」 それぞれが自己紹介をしてくる。皆はタカヤに名前を聞きたがっているようだが、記憶喪失の男に聞いてもわからないだろうと、名前を聞きづらいようだ。 「あの……私達はあなたの事、なんて呼べばいいかな?」 フェイトが困った顔で質問する。 「……何でもいい。」 「じゃあ、Dボゥイってのはどうかな?」 「「Dボゥイ?」」 エイミィが「ひらめいた!」という表情でタカヤに言う。その場の皆も「は?」という顔をしている。 「うん♪デンジャラスボゥイの略だよ。一人であの化物達を全滅させちゃったみたいだし。なんか危険な雰囲気だし」 エイミィは笑いながら言う。特に他意は無い無邪気な表情だ ちなみに化物とはさっきリンディが言っていたモンスターと見て間違いないだろう。 「エイミィ……もうちょっとマシなのを……」 「いや……それでいい。」 「え?」 クロノがエイミィに突っ込もうとした時、タカヤ……いや、Dボゥイが割り込んだ。 「Dボゥイでいい。」 「「…………。」」 こうしてタカヤはDボゥイと呼ばれる事となった。これが、この世界でのDボゥイ誕生の瞬間である。 海鳴市、図書館。 八神はやてが車椅子に座ったまま少し高い場所にある本へと手を延ばす。 だが微妙に届かずに困っていた所、一人の少女が変わりに本を取ってくれた。 「これですか?」 「はい。ありがとうございます」 はやての顔が「ぱぁっ」と明るくなる。そして紫の髪をした少女にお礼を言う。 「実は時々見かけてたの。あ、同じくらいの年頃の子がいるなって」 「あ、実はうちもそうなんよ。」 二人は図書館の椅子に座り、話を始めた。同じくらいの年頃の女の子だから、という理由で意気投合したのだ。 「あ、私は月村すずか」 「うちは八神はやて。ひらがなではやて。変な名前やろ?」 お互いに自己紹介する。はやては少し笑いながらそんな質問をする。 「ううん!とってもきれいな名前だよ!」 すずかは自虐的なはやてを弁護する。本当にきれいな名前だと思ったのだ。 しばらくたって、すずかがはやての車椅子を押しながら出口へ向かうと、金髪の女性-シャマル-がおじぎをしてくる。 「もうここまででええよ」 「うん、じゃあ私はこれで」 はやてがすずかに言い、すずかもシャマルがいるからここからはついていかなくて大丈夫だろうと判断し、その場から立ち去った。 今度はシャマルがはやての車椅子を押して歩く。 「寒くないですか?」などと他愛もない話をしながら図書館を出ると、今度はピンクの髪をポニーテールにした女性-シグナム-がいた。 「シグナム!」 「はい。」 シグナム、シャマル、はやての三人は家に向かって歩き出す。 晩御飯の話や、材料の話など、いろいろな話をしながら。 「そういえば、ヴィータは今日もどっか行っとるん?」 「……。」 はやての言葉に少し困惑した顔をするシャマル。そこでシグナムが、「ヴィータは毎日遊び歩いてるから」と言い、なんとかごまかす。 「まぁザフィーラもついてるし、大丈夫でしょう。」 「そぅやなぁ。そういえば、シンヤはどないしたんやろ?最近夜まで帰ってこぉへん事よくあるけど……」 はやての言葉に今度はシグナムもシャマルも「うっ!」という顔をする。 「シ……シンヤ君も、年頃の男の子だし、色々あるのよ……ね、シグナム?」 「ん?……ああ。だがあまり主に心配をかけさせるものでは無い。今度私から言っておこう。」 「うん。お願いするわぁ、シグナム。」 シャマルとシグナムはなんとかこれもごまかすことに成功する。 「(まったく……主に心配をかけさせるなとあれほど言ったのに……)」 「(まぁまぁシグナム。シンヤ君のおかげでページの収集量が著しくアップしたんだから)」 「(まぁ……それはそうだが……)」 これはシグナムとシャマルの念話だ。はやてに聞かれる訳にはいかない会話等は念話で行われることが多い。 海鳴市、オフィス街。 「ぐぁあああ!」 路地裏から聞こえる叫び声。赤い装甲に身を包み、片手にランサー状の武器を携えた戦士-いや、悪魔といった方が相応しいか-『テッカマンエビル』と、それに倒された時空管理局員2名だ。 「フン……つまらないね。お前達なんか倒しても大した足しにはならないけど……」 エビルはそう言いつつも闇の書を開き、二人の局員から魔力の源である『リンカーコア』を抜き取り、闇の書の餌として与える。 そしてリンカーコアを抜き取られた局員達の悲痛な叫び声が再び夜の街にこだまする……。 「どこだ……?」 ヴィータはザフィーラと共に空中で強い魔力の持ち主を探していた。 最近ちょくちょく現れる強力な魔力の反応。あれを倒せば闇の書も一気に20Pは増えるだろう。 そこでザフィーラが「二手にわかれよう。」と提案する。 ヴィータはその提案に乗り、真っ直ぐに飛んでいく。 『対象、接近中』 しばらく飛んでいると、グラーフアイゼンの機械音が聞こえる。対象が近くにいると言うのだ。 一方、アースラ。 「艦長!海鳴市で空間結界が観測されました!」 「何ですって!?」 「……さっきから海鳴市がモニターに写らないんです!」 エイミィがリンディにそう報告し、ブリッジに複数のモニターが展開される。どれに写る映像も砂嵐だ。 「なのはさんは?」 「それもだめです!さっきからやってるけど、なのはちゃんとも連絡とれません!」 「そんな……。」 リンディは考え込む。今、アースラスタッフは別件で出払っているため、出動できる者はいない。 ならクロノやフェイト達は?これも無理だ。彼らは今、PT事件の裁判で判決待ちなのだ。 本局から局員を回してもらおうにも時間が掛かりすぎる。 リンディは「…………」と考え込み、万策尽きたかと思われた、その時…… 「俺が行こう……!」 ブリッジのドアの方向から声が聞こえる。 「「Dボゥイ!?」」 どうやらブリッジまで走ってきたのか、少し息切れしている。 クロノ達は前述の通り判決待ちだから、Dボゥイはアースラ個室で待機していたはず。突然の出現にエイミィもリンディも驚いている。 「……却下します。民間人であるあなたにそんな無茶はさせられません」 だがリンディはすぐに却下する。 「そんな事を言ってる場合ではないだろう。今あそこに向かえるのは俺だけだ……!」 「でも、Dボゥイ……あなた魔法は?」 今度はエイミィがDボゥイに質問する。確かにデバイスらしき物は持っているが、それはデバイスでは無い。 その体からは魔力らしきものも確認されたが、それも魔力とは違う何かだ。 「魔法など必要無い。」 「そんな無茶な……」 「それなら尚更行かせる訳にはいきません!」 リンディはさらにきつく言う。 「……頼む、行かせてくれ!俺は行かねばならないんだ!」 今度は真剣な面持ちでリンディに頼み込むDボゥイ。ここまでしなくともDボゥイならこんな戦艦一隻くらい破壊して脱出することもできる。 だがそれでは駄目だ。何故ならここは異空間だからだ。脱出したところで現場に向かえなければ意味が無い。 「……頼む!」 「……敵が魔導士でも……勝てる見込みがあるの?」 「ああ。俺は死なない!」 リンディはそこまで言うならとDボゥイに逆に質問する。 「はぁ……わかりました。そこまで言うからには、何かあるんでしょうね。」 Dボゥイの自信に満ち溢れた表情を見ると、何故か信じてみたくなった。リンディはため息をつきながらもDボゥイの出撃を許可する。 「……感謝する!」 「頑張ってね、Dボゥイ!」 エイミィもDボゥイに激励の言葉をかける。 Dボゥイは一瞬エイミィを見た後、転送ポートへと走る。その時、エイミィの目に写ったDボゥイの顔は、とても死ににいく男の顔には見えなかった。 「……ラダムッ!」 Dボゥイは転送ポートに入り、そう呟く。ラダム同士はお互いに引き合う性質を持っている。 海鳴市から感じる波動はまさしくラダムのものだ。 「(……ラダム!貴様らは俺が一匹残らず倒す!)」 Dボゥイはそう強く念じた……。 高町なのはは何者かが展開した結界と、こちらに向かってくる魔力に対抗するため、家を出てとあるビルの屋上に立っていた。 『来ます。』 レイジングハートの声。なのはは魔力が向かってくる方向を睨む。すると何かが高速でこちらに向かってくる。 『誘導弾(ホーミングボール)です』 「!?」 なのはは飛んできた誘導弾を防ぐために障壁『ラウンドシールド』を使う。 誘導弾一発なら、ラウンドシールドでふせげるだろう。そう思っていた。 だが誘導弾は予想以上の威力で、凄まじい衝撃がなのはに伝わる。 そして…… 「テートリヒ……シュラークッ!!」 誘導弾の方向から赤いバリアジャケットを身に纏った少女が飛んできた。 振り下ろされるハンマー、グラーフアイゼンを受けるために今度は右手でラウンドシールドを展開した。 「……っ!?」 だがこれも想定以上の威力。 なのはは吹っ飛ばされ、そのままビルから落下する。 「レイジングハート、お願い!」 『Standby ready』 なのはの掛け声に首にかけられたレイジングハートが呼応する。 そしてなのはの姿は変わっていく…… 「……この波動はまさか……ブレードか?」 エビルはこちらに向かってくる波動にテッカマンの力を感じた。 そのテッカマンが兄、タカヤことブレードである確証などどこにもない。だが本能がそう告げているのだ。 ブレードが来た、と。 「フフフ……そうか。やっと兄さんも来たんだね……。」 エビルはそう言い、「フフフ」と笑い始める。 「……クックック……アッハッハッハ!!今会いに行くよ、兄さんっ!!」 エビルはついには大声で笑いだし、ブレードが現れると思われる方向に向かって一気に加速する。 「いきなり襲い掛かられる覚えは無いんだけど!」 そう言いアクセルシューターでヴィータを追い詰めるなのは。まぁ、全て回避されているが。 「話を、聞いて!」 『divine buster』 なのはの言葉に聞く耳を持たないヴィータに対し、今度はディバインバスターを放つ。 放たれた桜色の光はヴィータをかすり、ヴィータの帽子を飛ばす。 そして飛んでいく帽子を見て、ヴィータの目付きが変わった。簡単に言うと、キレた時の目付きだ。 「……こンのやろぉー!!」 グラーフアイゼンを変型させ、カートリッジをロードさせる。 「ラケーテン……!」 ヴィータは変型したグラーフアイゼンを手に回転を始め…… 「ハンマァー!!」 一気になのはに飛びかかる。 なのははラケーテンハンマーをラウンドシールドで受けるが、凄まじい威力に障壁を破壊されてしまう。さらには障壁を貫き減り込んだグラーフアイゼンがなのはのバリアジャケットにヒットする。 「きゃぁぁぁぁああああ!」 なのははそのまま吹っ飛ばされ、ビルの窓ガラスを破り、倒れ込む。 ヴィータはゆっくりと床に転がるなのはを追い詰める。 一方なのはは障壁を破られた上にバリアジャケットの装甲まで貫通され、魔力も大幅に削られているため立ち上がることすらままならない状態だ。 ヴィータはグラーフアイゼンを構えゆっくりと歩いてくる。それに対抗し、震えた手でチカチカと点滅するレイジングハートをヴィータに向ける。 「(こんなので……終わり……?)」 なのははぼやける視界に映るヴィータを見ながら思った。 そしてなのはの目に映るのはグラーフアイゼンを振り上げるヴィータの姿。 「(嫌だよ……ユーノ君……クロノ君……フェイトちゃん……!)」 なのはがヴィータの攻撃に目をつむろうとしたその時- 「テックランサァーーーッ!!!」 遠くから聞こえる叫び声。 「!?」 「なんだ!?」 なのはとヴィータは声の方向を向く。ヴィータにとっては背後だ。 その方向から物凄い速度で何かが飛んでくる。 それもそのはずだろう。テッカマンは超音速を越えた速度で空を駆け、核兵器にも耐え得る体を持った超人なのだから。 そしてヴィータはそれを知っていた。 「なっ!まさか……!白いテッカマン!?」 「う……テッカ……マン?」 なのははヴィータが言う『テッカマン』という言葉に反応する。聞き慣れない言葉だ。 そして次の瞬間には白いテッカマンはヴィータの眼前にいた。手に持つランサー状の武器、『テックランサー』をヴィータへと構えて。 「(……白い……魔神……)」 なのははその白と赤の装甲を身に纏った戦士を見てそう思った。 白き魔神、テッカマンブレードの復活である。 「白いテッカマン……何者だ、テメェ?」 「…………。」 ヴィータはテックランサーを突き付けられながらもブレードを睨み付ける。 そしてその直後、なのはの周囲に魔法陣が現れる。 「なのは……遅れてごめん。」 現れたのはユーノとフェイトだ。ユーノはなのはの後ろでなのはに右手をかざしている。 「ユーノ君……フェイトちゃん……」 一方、フェイトはバルディッシュをヴィータに向けている。 「なんだテメェらは……こいつの仲間か?」 『サイズフォーム』 フェイトはバルディッシュをサイズフォームへと変型させる。「ガシャン」と音をたて、魔力の刃が鎌の形を形成する。 「……友達だ。」 フェイトはマントを翻し、バルディッシュを構える。 前へ 目次へ 次へ